建築雑感

「矢作英雄師の講演を聞き」       代表取締役 赤羽広治

 シンプルイズザベストという言葉がある。

「単純こそ偉大なり。」ということである。

 現在は情報化社会と云うことで、世の中何もかもが複雑な構造となっている

建築家吉田鐵郎は現代の多様化時代に一つのヒントを与えてくれていると感じ、

私は恩師矢作英雄氏に講演を依頼した。早速OKの返事。

伊那松島駅に迎えにいき、車に乗るなり第一声が

「ここは空気が薄いねえ。海抜はなんメートルですか?」と言われた。

後で分かったことだが、講演後韮崎に依り

翌朝ホテルを出発するなり具合が悪くなり救急車で病院に運ばれたらしい。

講演当日は「日本建築様式のすばらしさ」と題したものの、

主に吉田鐵郎の作品を中心にその回りの建築家史を講演していた。

実際は一寸無理があった感じだ。

聴講に来られた皆様に御礼を申し上げ又、お詫び申し上げます。

ここに吉田鐵郎のポリシーを私なりに書かせて頂こうと思います。

いくらかは矢作先生を通じて鐵郎の理念がみえて来ると思うからです。

先ず日本の建築は「自然と共存している。」ということを言っている。

自然は地域の山、川、植物、動物、人の全てです。

縄文の頃の竪穴住居から始まっている。

ここには永い歴史がある。

聖徳太子の時代に尺が取り入れられてから( 約千三百年前)

ずっと同じ様式できている。

この歴史の重さを是非感じてほしい。

あのように建築( 木造柱梁構造の美) して欲しいのではなく、

感じて頂ければ結構である。

もうすぐ紅葉の季節だから秋について書こう。

( 名鐵郎は四季を重視した日本の建築をあちらこちらで取り上げている。)

お日様はだんだん南に傾いていく。

中秋の月でには縁側に薄とお備えを進ぜる習慣がある。

是と同時期に夏世話になった風鈴をしまうんだろう。

夜長の寝るまの寝て時間虫の音を聞きながら夫は明日の仕事を考えながら酒、

母親は冬の準備の縫い物、子供たちは読書をしながらしまう間。

母親は一番最後にそっと縁側の戸を閉め床に付くのだろう。

と、このように私は解釈している。こんな人的な事までも吉田鐵郎は言っている。

しかもドイツ語でだ。